北アルプス 白馬岳 杓子岳 鑓ヶ岳   2012/07/15~17
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- 白馬大雪渓から白馬三山縦走 鑓温泉 -


白馬山荘 白馬鑓温泉小屋泊



その3 白馬岳の朝日の出

その4 杓子岳 白馬鑓ヶ岳

その5 白馬鑓温泉へ

その6 白馬鑓ヶ岳から猿倉

その1 白馬山荘まで

恒例の夏の北アルプス登山の日が近づいた。

今年は、白馬三山を縦走して鑓温泉の秘境の湯に浸かりたい。

白馬は昔からレジャーで何回か訪れたことがある。

しかし、登山としては白馬乗鞍まで登っただけで白馬岳には登ったことがない。

八方尾根の八方池や栂池から眺めた白馬三山はとても気高くまた険しく見えて

とても私たちが登ることが出来る山とは思えなかった。

しかし、あれから色々な山を経験して今なら何とか登ることが出来る気がする。

毎年体力が落ちていく中で、元気なうちに何とか登りたい。



2006/8/5 栂池から見た杓子岳2812m、白馬槍(鑓ヶ岳)2903m

例年なら夜走って朝着けばそのまま登ったが、白馬岳の大雪渓コースは標高差が1700mもある。

体力温存のために前泊することにする。

今年の梅雨入りは早かったので梅雨明けも早いだろうと7月18日から21日までの日程に決める。

前泊の白馬のペンションの宿泊券が共同購入で一泊二食で3800円。

早速購入して18日に予約を入れる。

所が3連休が近づくと19日から20日の天気予報が悪い。

代わりに15日が天気で16,17日は曇りの予報。

急遽予定を変更。

14日から17日の日程に変更。

所がチケットを持っているペンションは14日は満員。

もったいないが、他のペンション「白馬荘」に変更。

14日は7時過ぎに出発して14時前には白馬に到着。

チェックインしてから直ぐ近くの「白馬かたくり温泉十郎の湯」へ出かける。

単純泉だがぬるぬるで柔らかい泉質で疲れがとれる。

この温泉は登山客などのために相部屋には1500円で泊まることが出来る。

たっぷりの食事を楽しんだ後地酒を飲んで8時には就寝。



15日は4時に起きて朝食。

白馬荘は登山口まで送迎のサービスが付いているので、ペンションの女将に猿倉まで送ってもらう。

これで一泊二食6800円は安い。

所が今日は上天気の筈なのに猿倉まで来ると小雨が降っている。

猿倉は標高1230m

白馬岳は標高2932m

一日の標高差1700mは初めての経験。



5時42分 そのうち止むだろうとウィンドブレーカーを着て、リュックカバーだけ付けて出発。

これが大失敗



直ぐに鑓温泉への分岐を通過

2日後に無事此処に降りてくることが出来ますように。



連休の中日というのに登山客は少ない

エゾアジサイが綺麗だ



シコクでは見かけないピンクのタニウツギが沢山咲いている。

小さな沢を渡っていく



ミヤマカラマツの咲く遊歩道を上っていく。



サンカヨウやニリンソウが沢山咲いている。



キヌガサソウが目立ち始めると白馬尻に到着。

6時45分



白馬尻小屋で行動食

今回は行動食として食べやすくてカロリーが高く腹持ちする様にバターを付けて焼いたパンのヘタを持ってきた。

それとリュックのポケットに入る小さなおまんじゅう。

これもパサパサして喉に引っかかるのは避けてしっとりとして餡入りの一口サイズ。

しかし、此処までの雨でウィンドブレーカーやシャツはビッショリ。

薄い汗取りシャツの上に直接ゴアテックスのレインブレーカーを着用する。



此処でアイゼンを付ける。

出発前に4本爪か6本爪かで迷うが、今年は雪が深そうなので6本爪を用意してきた。

7時15分出発

標高1560m

所がカメラに水が入り調子が悪くなった。

ペンタックスの防水カメラに変更。

最初からこのカメラにしておけば良かった。

雪渓の左を登って行くとキヌガサソウが多い



大きな葉のエンレイソウやベニバナイチゴが咲いている。



20分程登っていよいよ雪渓に入る。

7時35分

ケルンには看板が立てかけてあり、落石が多いので注意するように書いてある。

午後2時以降の入山は禁止。



雪渓は意外と登山者が少ない

雪渓の途中に落石注意の標識が沢山ある。



雪渓をひたすら登る

この大雪渓では昨年雪崩で多くの人が亡くなっている。

また、雪渓での落石の怖さは涸沢で経験している。

杓子沢からの落石が怖いらしいが、幸い今日は落石の音は聞こえない。



一生懸命登るが雨が本降りになってきた。

前にも誰も見えないし、後ろを見ても誰も付いてきていない。

白馬尻小屋には大勢いたのだが雪渓歩きに戸惑っているのかも知れない。

何しろアイゼンを履いたことも雪道を歩いたことも初めてという人達が大勢この雪渓にやってきているらしい。

右に三号雪渓、二号雪渓らしき雪渓が伸びてきている。

三号雪渓や二号雪渓の奥に白馬岳頂上があると言うが全く見えない。



厳しいと言われる登りだが、天狗塚や伊予富士の雪の斜面に比べると緩やかで歩きやすい。

やっと前の登山者に追いつくと直ぐに岩場に着く

9時6分

雪渓に入ってから此処まで1時間31分

此処で標高が2220m

雪渓に入ってから標高差560m登ってきたことになる。



此処で一旦アイゼンを外す。

ガイドブックでは落石があるので休まないで登れと書いてあるが、大勢が休憩中だ。



ミヤマキンポウゲやヨツバシオガマが目立つようになる。



大雪渓上部に着いたと思っていたが、この岩場は丁度涸沢のサイディングラードの様に両側は雪渓となっている。

この両側の雪渓は何処まで続いているのだろうか?

雨とガスで周りの様子がわからない。



この辺で下りの登山者が多くなりすれ違いに苦労する場所もある。

ハクサンイチゲが目立つようになる。



ミヤマオダマキが沢山咲いている。

鮮やかなブルーがガスの中で目立っている。

一瞬ガスが晴れたので、下方を見るとごま粒のように登山者が続いている。



葱平(ねぶかっぴら)に到着 9時39分

ガイドブックでは雪渓を登り切ると葱平に着くと書いてあるが、岩場の取り付きから更に30分以上登ってきている。

此処で休憩をしたくなるが、落石事故の多い所らしいなのでそのまま登り続ける。



シナノキンバイの大きな花がガスの中に浮かび上がる





暫くするとまた雪渓に向かう。

何でこんな所に雪渓があるのかと思うが、実は大雪渓はこの岩場の右を稜線直下まで伸びているらしい。

そのため頂上に向かうためにはこの雪渓をトラバースしなければならない。

天気が良ければ良く解るのだろうが悪天候時は自分がどのような位置にいるのか良く解らない。

赤いレインのパトロール隊が降りてくる。



岩場を越えると小雪渓をトラバースする。

降りてきた人たちはアイゼンはいらないよと言うが私たちは確りとアイゼンを付ける。

確かに良く踏まれていてアイゼンなしでも登ることが出来るがもし滑れば遙か下まで転落してしまう。

このような所でアイゼン無しを強調する人が多いが??だ。

最近のアイゼンは数分で着脱出来るので面倒がらずに付けるに越したことはない。



避難小屋(旧トイレ小屋)に10時16分着

標高2435m

今はトイレは無いらしい

中は8人ぐらいが座れるようになっている。

行動食でも食べようと思って入ろうとすると中に男性がいて「どうかしましたか?」と聞く。

どうも怪我や体調不良の人しか利用出来ないようだ。

天気が良ければこの向こうに杓子岳の岩峰・天狗菱が綺麗に見えるはずだが残念だ。



中には誰もいないのにみんな外の雨の中で座り込んで休憩している。

仕方なく私たちも行動食のおまんじゅうを食べて直ぐに出発

ミヤマキンポウゲが沢山咲いている。



やがて歩きやすい道となると初めて見る花が咲いている。

この花がかの有名なウルップソウか!

咲いたばかりの新鮮な花は魅力的だ

ウルップソウは寒冷地や高山の斜面などの湿った砂礫地に生える。

千島列島のウルップ島で1981年に最初に発見されたのでその名が付いたらしい。

氷河期に日本に南下し、その後高山の頂上に取り残されたらしい。

なんとまあ寂しい過去を持つ花だ事。

しかし、白馬三山の稜線では驚く程当たり前にニョキニョキと沢山咲いている。

それと、1981年より間にも白馬岳には沢山咲いていたと思われるのにそれまではなんと呼ばれていたのだろうか?

何か解せない??

また、その名付けの島ウルップ島は今どのようになっているのだろうか。

気象観測で重要な島で会ったウルップ島からの気象情報の入電はもう10年間も止まっているらしい。

そのウルップ島に今でもウルップソウは咲いているのだろうか?



黄色い花は不明花

10時33分また小雪渓を渡る。

雪渓に大穴があいていて怖い



ウラジロナナカマドに花が咲いている。

この白い花はシロウマオウギかな?



ウツボグサのような?の花とミヤマシオガマ

白馬ではミヤマシオガマが多くショッキングピンクの花がよく目立っている。



タカネシュロソウかな?



イワオウギと?



2533m 10時55分

可成り疲れてきた。

行動食の一口まんじゅうを食べて頑張る。

また雪渓が見えてきた。



岩の登山道は雨水がゴウゴウと流れて沢の中を歩いているようだ。

意外と靴の中に水は入らない。

家内のシリオの靴は可成り水が入ってきたようだ。

ウルップソウが多くなり慰めてくれる。



また雪渓を渡る

この雪渓は傾斜も緩やかで危険は感じられない。

小雪渓を渡るとミヤマオダマキが沢山咲いていてついつい沢山写してしまう。



ハクサンシャクナゲは花が散っている

ミヤマオダマキが綺麗だ



ウルップソウとミヤマシオガマが咲き乱れている。

天気が良ければ素晴らしい花園が見渡せることだろう。



11時42分 やっと白馬岳頂上宿舎到着

珈琲でも飲んで休みたかったが、家内はそのまま登って行く。



コイワカガミとショウジョウバカマが沢山咲いている。

つい最近までこの辺にも雪があったのだろう。



稜線に出て白馬岳に向かう



稜線の両側はお花畑が広がっている

イワベンケイとオヤマノエンドウが多い。



オキナグサの仲間のツクモグサだと思うがみんな花弁が丸まっている。

白馬岳を代表する花らしいので綺麗に咲いている花を探したが見当たらなかった。



コマクサがガスの中にぼんやりと浮かんでいる。

この白い花はタカネツメクサかな。



キバナノコマノツメも咲いている。

ガスで真っ白で何も見えなかったが突然目の前に石積みが見えた。

12時10分 白馬山荘到着

標高2832m。

猿倉から6時間28分かかった。

総歩行距離 7.3㎞

累計標高差 1603m

雪が多かったのと花が多かったので標準タイムを可成りオーバーした。



赤い建物は食堂と昭和大学の診療所

右が受付と宿舎



玄関前で記念撮影

此処は富山県と長野県の県境らしい

受付を済まして宿舎に行くと到着が早かったので2Aのgとhが私たちの寝床。

二階がなくて広々とした部屋だ。

受付の人の話では昨日は超満員だったが今日は予約は少ないらしい。

この後どうなるか解らないが、もしかすると一人布団一枚で寝られるかな?



乾燥室に靴からレインなど全て吊してからレストランスカイプラザに向かう。

今回必要ないかと思ったが念のためライトダウンのジャケットを持ってきて大正解。

雨の日の山頂は可成り寒い。



何はともあれ私は生ビール、家内は珈琲で乾杯。

意外と疲れは少ない。



部屋に帰って一眠りするがまだ時間はたっぷりある。

ロビーの石油ストーブの前でくつろぐ。

次々と登山客がやってくる。

新日本百名山を書いた岩崎 元朗さんがやってきた。

珍しく家内は飛んでいって挨拶していた。

東京で山登りをしていたとき良く本を読んでファンになったらしい。

やがてガスが晴れて時々旭岳が顔を現す。

この頃、足を引きずったり疲労困憊して到着する登山者が多くなる。

高山病になったと話している若い男性もいた。

どちら側から登っても白馬は初心者には大変な山のようだ。



頂上宿舎や白馬岳山頂もガスの切れ間から見えだした。



5時になり食事タイム

食堂棟に行くと既に長蛇の列。

なんと足柄山の金時娘さん(小宮山妙子さん)の色紙があった。

昭和大学の診療所もあり何人かが診察を受けていた。



食事はバイキングと聞いていたが既に皿におかずが盛ってあり順番に受け取っていく。

品数もボリュームもたっぷり

私は風邪が治りきっておらず、天ぷらなどの油ものを食べると胸が悪くなる。

何時もはお代わりするご飯も残してしまった。

皆さん寒いのかダウンやジャケットを着ている人が多い。



食事が終わってもまだ時間は早い。

外に出ると明日登る予定の杓子岳や白馬鑓ヶ岳がクッキリと見えるようになった。

その右には雄山から劔岳までそして少し離れて毛無三山へと続く立山連峰がクッキリと顔を出した。

劔岳と毛無三山の間奥にうっすらと見えているのは白山らしい。

そう言えば昨年、白山の大汝峰に登った時に劔岳の左奥に白馬岳らしき山が見えていたのを思い出す。



劔岳は三角錐の山容が素晴らしい。

雄山と白馬鑓ヶ岳の間に薄く黒部ダムが見える。

立山連峰や黒部ダムから白馬岳を探すとなかなか同定出来ないが、白馬岳からだと山々が良く解る。



外で景色を楽しんでいると長野県警山岳救助隊の人たちが走って来た。

なんと私たちの後から小雪渓を歩いていた68歳の男性がスリップして滑落したらしい。

ツアー客だったらしくツアーガイドと旅行社の男性が呼ばれて可成りきつく注意されていた。

やはり小雪渓を渡るときアイゼン装着の指導をしなかったことを注意されているらしい。

男性は出血が多かったらしいが松本市内の病院に無事収容されたらしい。

ストック等の残留品を渡していた。

今年も北アルプスの山岳事故の大半がこの後立山連峰で発生している。

穂高連峰やや北鎌等が厳しいと思われるが、白馬などは初心者がツアーなどで簡単に登るので事故が多いのだろう。

今回の事故の直ぐ後ろを歩いていた人がいて、ガスで視界のない中滑落していく悲鳴が聞こえて驚いたと言っていた。

怖いなあ


2.白馬岳山頂へ



夕食後ノンビリしていたらドンドン見晴らしが良くなる。

6時過ぎだが山頂に向かう。

白馬岳山頂は長野県側が垂直に切れ落ちている。

日本海から吹き付ける冬の季節風とそれによりもたらされる大量の雪により、

長い年月をかけこのような西側は穏やかな稜線となり、

東側はほぼ垂直に近い鋭い落ち込みを見せる非対称山稜となっている。

この東側は有名なホッサマグナ地帯であり、浅い位置にマグマ溜まりがあるため火山も無いのに温泉が多い。

それにしても抉れたような山容は異様だ。



15分程で白馬岳山頂標高2932mに着く

強風で吹き飛ばされそうだが夕日を狙ったカメラマンが多くいる。

振り返ると杓子岳の長野県側は厚いい雲で覆われている。



一旦朝日岳の見える方に行ってみる。

後方中央に朝日岳、その右手前が雪倉山、中央が鉢ケ岳。

小蓮華山はガスに隠れて見えない。

此処から朝日岳や白馬大池などに縦走することが出来る。

今年の5月5日に天候が急変して、6名が凍死した痛ましい事故が起こっている。

長野県側からガスがわき上がってきている。

山際はガレていて近づくと滑り落ちそうだ。

風が強いので余計に怖い。



山頂には巨大な方位盤(風景指示盤)がある。

 この風景指示盤は、50貫近くある花崗岩2個で出来ているらしい。

一貫はだいたい3.75kgだから、188kgということになる。

昭和16年に富士山で働いていた強力「小宮正さん」がこの風景指示盤を背負って白馬岳頂上に登ったことが

新田次郎著の小説「強力伝」に書かれている。

その強力さんは食堂に色紙が掲げてあったあの足柄山の金時娘さんのお父さんらしい。

こんなでかくて重い物を背負ってこの白馬岳に登るとは凄いの一言だ。

目の前に旭岳(2661.2m)、清水岳(2622m)



清水岳の右奥には黒部川が日本海に流れ込んでいるのも見える。

山頂には一等三角点「白馬岳」があるがその直ぐ側は切れ落ちている。

風雨で削り取られるとそのうち三角点が落ちてしまいそう。

向こうに杓子岳や白馬鑓ヶ岳そしてその右に劔岳が見える。



杓子岳と白馬鑓ヶ岳の間を見ると唐松岳から五龍岳そしてその奥に双方峰を持つ鹿島槍ヶ岳

もっと明るくて晴れているときに見れば素晴らしい景観だったことだろう。

槍が岳もその右くらいに見えるはずだ。



イワウメが沢山咲いている



長野県側を覗き込むと身がすくむ。



白馬山荘創始者 松沢貞逸 翁のレリーフで記念撮影

松沢貞逸 翁は
日本で最初の営業山小屋(白馬山荘の前身)を明治38(1905)年に創設した。

立案時、弱冠16歳だったと言う。



ウルップソウの向こうに杓子岳と白馬鑓ヶ岳

チョウノスケが沢山咲いているのを見たのは初めて。



山荘に帰ると眼下の頂上宿舎にも明かりが付いていた。

8時過ぎに就寝

幸いに布団一枚に一人とゆっくり寝ることが出来た。

その3 白馬岳の朝日の出

その4 杓子岳 白馬鑓ヶ岳


その5 白馬鑓温泉へ

その6 白馬鑓ヶ岳から猿倉へ


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